近年、「終活(しゅうかつ)」の分野にもAI技術が急速に取り入れられ始めています。終活とは、自身の死後に備えて身の回りを整理し、家族や社会に迷惑をかけないよう準備する活動のことを指します。従来はエンディングノートの作成や遺品整理、葬儀・相続の準備などが中心でしたが、少子高齢化とデジタル化の進展により、AIを活用した新たな終活支援サービスが注目を集めています。
たとえば、AIによる**「デジタル遺品整理サポート」**では、利用者のスマートフォンやクラウド上に残るデータをAIが自動的に分類・分析し、重要なデータやアカウントを特定します。これにより、遺族が煩雑なデジタル遺品の整理に悩む負担を軽減できます。また、SNS投稿や写真をAIが解析し、生前の思い出や人柄を反映した「追悼動画」や「メモリアルページ」を自動生成するサービスも登場しています。
さらに、近年ではAIが本人の発言や文体、音声データなどを学習し、**「デジタル分身(AIアバター)」**として遺族と対話できる技術も開発されています。これにより、家族は故人との思い出を振り返りながら心の整理を進めることができるとして、心理的ケアの観点からも関心が高まっています。
一方で、こうしたAI終活サービスの普及には、プライバシー保護や倫理面の課題も指摘されています。個人データの扱いや、AIが生成する“死後の人格”をどこまで許容するかといった議論は、今後の社会的な課題となるでしょう。
それでも、AIによる終活支援は、「死を準備する」ことをより前向きに捉えるきっかけにもなっています。単なるデジタル技術ではなく、「人生の記録を残し、想いを伝える」ための新しい文化として、AI終活は今後さらに広がりを見せると期待されています。