◆Hybrid Microsoft Entra Joinとは
既存ドメインに参加した状態のまま、Microsoft Entra Connectを利用しMicrosoft Entra IDへ同期し、デバイス情報がオンプレActive Directoryとメリットとしては、既存のオンプレActive Directory基盤を活用しつつクラウド活用でき、Active DirectoryのIDを利用して
クラウド、オンプレ両方にシングルサインオンが可能になります。
なお、これまでActive DirectoryのGPOによって行われていたデバイス制御は引き続きGPOで制御することが可能です。
◆Hybrid Microsoft Entra Joinの構成に失敗した場合の調査について
構成に失敗した場合、Microsoft Entra IDの観点だけでなく、オンプレADの観点での調査も必要になります。
問題の切り分けを行うことで問い合わせ依頼や調査をスムーズに行うことができます。
・オンプレAD上のデバイスオブジェクトがMicrosoft Entra IDのデバイス一覧に存在しない
最初にHybrid Microsoft Entra Joinが正常にできているかの確認のため、Microsoft Entra IDのポータル画面から対象のデバイスがデバイス一覧に存在するかの確認を行います。
そもそも対象のデバイスがデバイス一覧に存在しない場合、Microsoft Entra Connectによって同期されていない可能性が高いです。
Microsoft Entra Connectは[userCertificate]属性に何らかの値が書き込まれている場合に、Microsoft Entra IDにコンピュータオブジェクトを同期します。
ドメインコントローラ上でADSIエディターを起動し、対象デバイスのコンピュータオブジェクトのプロパティを開き[userCertificate]属性に値が書き込まれているかどうかを確認します。
[userCertificate]属性に値が書き込まれない原因は以下が考えられます。
- タスクスケジューラのAutomatic-Device-Joinタスクが有効になっていない
このタスクの処理によってHybrid Microsoft Entra JoinのJoin処理が行われるため、このタスクが実行されないとデバイスはMicrosoft Entra Connectの同期対象となりません。
このタスクはオンプレADに参加するタイミングで有効になるため、このタスクが有効になっていることを確認してください。
※各デバイス側で確認が必要になるため、場合によってはデバイスを利用中のユーザーに依頼する必要があります。
- Service Connection Point (SCP) が正常に構成されていない
SCP はクライアント端末が Hybrid Microsoft Entra Join する先の Microsoft Entra ID テナントの情報が書き込まれています。
上で確認したタスクスケジューラのタスクはSCPをもとにMicrosoft Entra IDへのエンドポイントを確認し、[userCertificate]属性に必要な情報を書き込みます。
SCPが正常に構成されていない場合、[userCertificate]属性は書き込まれないため、結果的にMicrosoft Entra IDへ同期がされなくなります。
SCPが正常に構成されているかは、以下のいずれかで確認することができます。
・Active Directoryの構成パーティション・Hybrid Microsoft Entra Joinに必要なMicrosoft Entra IDのエンドポイントにアクセスできるか
以下のURLへの接続が可能であることを確認してください。
- https://enterpriseregistration.windows.net
- https://login.microsoftonline.com
- https://device.login.microsoftonline.com
- https://autologon.microsoftazuread-sso.com (シームレスSSOを使用しているもしくは、使用する予定がある場合)
・Microsoft Entra Connectで同期対象になっていない
対象デバイスのコンピュータオブジェクトが同期対象OUに含まれているか確認を行います。
同期対象OUにオブジェクトが含まれていない場合は、同期対象OUに移動後、Microsoft Entra Connectの同期間隔(規定30分)を待ってデバイス同期されるか確認してください。
同期間隔まで待てない、すぐに確認したい場合には、以下のコマンドを実行し手動で同期を行ってみてください。
Start-ADSyncSyncCycle -PolicyType Delta (差分同期を行います)
※完全同期はかなりの時間を要する可能性が高いため、同期ルールの変更やスキーマバージョンアップを行う以外は避けたほうがよいです。
◆Tips
プライマリ更新トークン(PRT)が正常に取得できていなければHybrid Microsoft Entra Joinが完了したとは言えません。
まずはコマンドプロンプトを起動して、ユーザー権限で以下のコマンドを実行しPRTが取得できているか確認を行います。
# dsregcmd /status
AzureAdJoined : YES
DomainJoined : YES
AzureAdPrt : YES (or NO)
PRTが取得できない場合の一般的な要因は先に記載したMicrosoft Entra IDのエンドポイントへアクセスできないことが考えられるため、確認を行います。
確認しても問題ない場合には、調査依頼を行いましょう。